2026年9月30日、米ネブラスカ州のテレビ局10/11 NOWは、Googleのリンカーン・データセンター「Agate LLC」が州へ提出した年次報告書で、黒塗りされた水・電力の数値をコピー&ペーストすると読める状態だったと報じました。
報告書から読めたのは、ピーク時の電力需要52.65MWと、前年の水使用量13.299メガガロンです。この2つの数字が何を表すのかを追うと、データセンターが電力と水をどこで使っているのかが見えてきます。
Googleデータセンターの報告書で何が起きたのか
ネブラスカ州へ提出されたAgate LLCの報告書では、電力使用量と水使用量が営業秘密(trade secret)として非公開扱いになっていました。ところが10/11 NOWが報告書を確認すると、黒塗り部分をカーソルで選び、別の文書へコピー&ペーストすることで文字を読み取れました。そこに記載されていたのが、ピーク時の電力需要52.65MWと、水使用量13.299メガガロンです。
13.299メガガロンは約1,330万ガロン、約5,030万リットルに当たります。10/11 NOWは、この水が冷却塔、蒸発を利用する冷却設備、そのほかの施設運用で使われたと報じています。
不完全な黒塗りをGoogle側と州側のどちらが実際に施したのかは、10/11 NOWの記事では特定されていません。確認できるのは、Agateが電力と水の情報を営業秘密として扱うよう求めていたことと、州に提出された文書の黒塗り部分から数値を読み取れたことまでです。
10/11 NOWは、9月30日時点で報告していた6施設について、水に関する報告値を合計すると約7億6,500万ガロンだったとも報じました。ただ、Googleのパピリオン・データセンター「Fireball Group LLC」は547.88メガガロンを「2025 Annual Water Consumption」と報告しており、Agateの「water usage」とラベルが異なります。
そのため、約7億6,500万ガロンは10/11 NOWが6施設の報告値を合計した数字として扱います。AgateとFireballについても、同じ基準で測った水の量として倍率を比べることはできません。
52.65MWというピーク電力需要は何を意味するのか
52.65MWは、Agateが1年間に使った電力量ではありません。MW(メガワット)は、その時点でどれだけの電力を必要とするかを表す単位で、年間など一定期間に使った電力量を表すMWhやTWhとは役割が違います。
データセンターで電力を使うのはサーバーだけではなく、ストレージやネットワーク機器に加え、冷却設備や電力変換・配電設備も動かす必要があります。施設全体で使った年間エネルギーを、IT機器が使った年間エネルギーで割った指標がPUE(Power Usage Effectiveness)です。
米エネルギー省(DOE)は、PUEを次の関係で定義しています。
PUE = 施設全体の年間エネルギー使用量 ÷ IT機器の年間エネルギー使用量
値が1に近いほど、IT機器以外に使うエネルギーが少ないことを表します。AgateについてはIT機器の年間エネルギー使用量が分からないため、52.65MWからPUEを求めることはできません。
なぜデータセンターは水を使うのか
10/11 NOWによると、Agateの水は冷却塔や蒸発冷却設備でも使われていました。サーバーなどから出る熱を施設の外へ逃がすために、水を使う冷却方式があるからです。
DOEが示す典型的な設備では、IT機器から発生した熱を冷却水の系統へ移し、冷却塔まで運びます。そこで水の一部を蒸発させ、熱を周囲の大気へ放出します。
Agateの13.299メガガロンは、ネブラスカ州法が報告項目として定める「年間の水使用量(annual water usage)」に当たる数字です。この表記だけでは、水源から取り出した量に当たるのか、蒸発などによって元の水源へ戻らなかった量に当たるのかまでは分かりません。
水使用量はなぜデータセンターごとに大きく違うのか
一つのデータセンターの水使用量を見ても、別の施設が同じくらい使うとは限りません。Lawrence Berkeley National Laboratory(LBNL)などが2025年に発表した研究では、処理する仕事の単位(ワークロード)ごとに見た水使用量に1万倍を超える差が生じ得ると報告されています。
差を生む条件には、サーバーの効率や稼働率、冷却方式、施設がある地域の気候、冷却を含むインフラの効率、使われていないサーバーの割合、機器の更新周期があります。さらに、サーバーへ供給する電力を作る段階での水利用も影響します。
水利用の効率を見る指標がWUE(Water Usage Effectiveness)です。DOEは、年間の施設内水使用量をIT機器の年間エネルギー使用量で割り、L/kWhで表します。
WUE = 年間の施設内水使用量 ÷ IT機器の年間エネルギー使用量
Agateについて分かっている数値だけでは、WUEは求められません。
データセンターの外でも発電に水が関係する
データセンターと水の関係は、施設の敷地内だけでは終わりません。サーバーを動かす電力を作る発電側でも、電源の種類や場所によって水が使われるためです。
国連大学水・環境・保健研究所(UNU-INWEH)の2026年報告は、AIに使う電力の環境負荷について、どこで、どの電源から発電するかによって炭素だけでなく、水や土地のフットプリントも変わるとしています。
データセンターの水負荷を見る場合は、冷却など施設内で直接使う水と、電力供給に伴う間接的な水フットプリントを分ける必要があります。Agateについては発電側の水利用量が示されていないため、13.299メガガロンへ別の推計値を足して施設全体の水負荷を算出することはできません。
AIでデータセンターの電力需要はどこまで増えるのか
個別のAgateで判明した52.65MWとは別に、米国全体ではデータセンターの電力使用量が大きく増えると予測されています。
LBNLが2026年6月に公開した「United States Data Center Energy Usage Report: 2025 Update」では、2030年の米国データセンター電力使用量を、基準となるシナリオで649TWhと推計しています。これは2030年の米国総電力使用量の11.8%に当たります。
将来の数字には幅があり、複数の不確実性を組み合わせたシナリオでは521〜843TWh、米国総電力使用量の9.5〜15.3%とされています。AI向けチップの導入数、機器の使用年数、待機時の消費電力や稼働率などによって予測が変わるため、649TWhは2030年の確定値ではありません。
こうした需要増加を受け、発電設備をどう確保するかも各地で論点になっています。AI・データセンターの電力需要と欧州の原子力政策では、欧州の原子力政策とデータセンター需要の関係を整理しています。
計算密度が高い設備では、同じ床面積から処理する熱も増えます。その対策の一つが、空気だけではなく液体を使ってIT機器から熱を運ぶ液冷です。
DOEが示す直接液冷(direct liquid cooling)の構成例には、IT機器から液体で運んだ熱を最終的に冷却塔へ送り、蒸発冷却で大気へ逃がすものもあります。液冷を採用しただけで、施設の水使用量がゼロになるとは限りません。
Googleは使った水をどう補おうとしているのか
Googleの「2026 Environmental Report」によると、同社の水資源保全プロジェクトは2025年に約77億ガロンの水を補充(replenish)し、これは同年の淡水消費量の約78%に当たるとしています。
Googleが2030年までに掲げている目標は、オフィスとデータセンターで消費する淡水量の平均120%を補充することです。Googleは水ストレスのある地域などで、流域の回復や水利用改善を支援するプロジェクトを進め、その効果を補充量として計上しています。
2025年の約77億ガロンと約78%はGoogle全社の水資源保全活動に関する実績で、リンカーンのAgateだけを対象にした数字ではありません。
ネブラスカ州ではデータセンターに何を報告させているのか
ネブラスカ州では2026年4月14日、LB1010が知事の承認を受けました。州法ではデータセンターの所有者または運営者に、毎年9月30日までにDepartment of Water, Energy, and Environment(DWEE)と州議会の天然資源委員会(Natural Resources Committee)へ年次報告書を提出するよう求めています。該当する規定は7月18日に発効しました。
報告対象には施設名、所有者、所在地、面積のほか、年間の電力需要と水使用量、売上税・使用税の免除、州制度によるインセンティブ、省エネや負荷管理、再生可能エネルギーへの取り組み、施設の耐用期間などが含まれます。
Agateの報告書にも税に関する情報があり、10/11 NOWは2025年分について55,822,472ドルの還付を見込んでいると報じています。
LB1010の成立後、Jim Pillen知事は7月20日付のExecutive Order 26-17に署名しました。命令は前文で、大規模なデータセンターなど資源を多く使う開発の急増が、地下水や電力インフラ、電気料金、土地利用への懸念を生んでいると述べています。
そのうえで、州の税制優遇制度の一つであるImagiNE Nebraska Actに基づくインセンティブの審査について、計画が州の長期的な経済的繁栄に資するかを考慮するよう経済開発局長に求めています。あわせて、局長はDWEEの長と連携し、計画が州の環境の質に寄与するかも考慮します。経済開発局と歳入局には、天然資源、エネルギーインフラ、農業、公益事業などに詳しい州機関と必要に応じて連携し、インセンティブの判断に州全体の利益を反映させるよう求めています。
同じ行政命令は、DWEEにData Center Task Forceの設置を指示しました。Task Forceは、データセンターがネブラスカ州の水と環境に与える影響を分析し、既存の州法を見直したうえで、2027年に州議会へ提言します。提言の対象は、将来のデータセンター計画が天然資源を損なわないための措置と、郡の土地利用規制(ゾーニング)の指針です。
データセンター計画と地域の意思決定は日本でも課題になっており、データセンター建設と地域住民の意思決定では印西市や日野市などの事例を扱っています。
FAQ
Googleの「120%水を補充する」とはどういう意味ですか?
Googleは2030年までに、オフィスとデータセンターで消費する淡水量の平均120%を、流域改善などの水資源保全プロジェクトを通じて補充する目標を掲げています。施設で使用した同じ水を120%戻すという意味ではありません。
ネブラスカ州はなぜデータセンターの水や電力を把握しているのですか?
州法ではデータセンターに水・電力・税制優遇などを含む年次報告を義務づけています。これとは別に、7月20日付の行政命令によってData Center Task Forceの設置も指示され、水資源や環境への影響分析が進められています。
参考・参照元
- 10/11 NOW「UPDATE: Improper redaction reveals Lincoln’s Google Data Center water and electricity usage」
- Nebraska Revised Statute §70-1506
- Nebraska Legislature「LB1010 Actions」
- Nebraska Executive Order No. 26-17(PDF)
- ※日本国内の一部回線では、接続がタイムアウトする場合があります。
- U.S. Department of Energy「Cooling Water Efficiency Opportunities for Federal Data Centers」
- Lawrence Berkeley National Laboratory「The water use of data center workloads: A review and assessment of key determinants」
- United Nations University「Environmental Cost of AI’s Energy Use: Carbon, Water and Land Footprints」
- Lawrence Berkeley National Laboratory「United States Data Center Energy Usage Report: 2025 Update」
- Google「2026 Environmental Report」
- Google「2025 Google Water Stewardship Project Portfolio」
