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AIでUMAは探せるのか?未知生物を追うDNA・画像・音の技術

ネッシーのようなUMA(未確認生物)を、AIで探すことはできるのでしょうか。

野生生物の調査では、水や土に残ったDNA、自動撮影カメラの画像、水中で録音した鳴き声が使われています。画像や音の量が増えると、人間だけですべてを確認するのは難しくなり、機械学習による分類や検索が使われます。

現在の技術で、AIだけが「これはUMAだ」と判定することはできません。ただし、環境DNA、カメラ画像、水中の録音から、既知の分類にうまく当てはまらないデータや、人が詳しく調べる候補を絞る技術はあります。

目次

環境DNAでUMAの痕跡を探せるか

環境DNAは、水や土などの環境中に残った生物由来のDNAを調べる方法です。生物そのものを捕獲しなくても、水などに含まれる遺伝情報から生息情報を得られます。

環境省の生物多様性センターは、水に含まれるDNAから淡水魚類や両生類の生息情報を得る調査手法の標準化を進めています。

海洋研究開発機構(JAMSTEC)の研究員は、環境DNA分析が、新種の可能性がある生物を探すときに調べる対象を絞るのに役立つと説明しています。

UMAを想定した調査で、実際に環境DNAが使われた例がネス湖です。

ネッシーは見つかったのか:ネス湖の環境DNA調査(250の水試料)

ニュージーランドのオタゴ大学(University of Otago)を中心とする研究チームは2018年、ネス湖で250の水試料を採取しました。採取場所は湖の周囲から中央部、最深部まで広がっています。

研究チームは各試料からDNAを取り出して配列を読み、世界のDNAデータベースと比較しました。2019年9月5日に公表した結果では、大型生物の目撃情報を説明できる生物がいるかという問題も調べています。
University of Otago「First eDNA Study Of Loch Ness Points To Something Fishy」

プレシオサウルスのような大型爬虫類に近い生物を示すDNAは、得られた環境DNAから確認されませんでした。サメやナマズのDNAも採取した試料から見つからず、チョウザメを示す証拠も確認できなかったと研究チームは説明しています。

一方、ウナギのDNAはほぼすべての採取地点で検出されました。

環境DNAからは個体の大きさまでは分かりません。そのため、研究チームは巨大ウナギを発見したとはしておらず、得られたデータだけでは非常に大きなウナギの可能性を否定できないとしています。

University of Otagoの発表文には、AIでネッシーを判定したという記述はありません。この調査が示しているのは、姿を確認できていない生物についても、水中に残ったDNAから仮説を調べられることです。

参照データにないDNAはどう扱われるのか

環境DNAは、採取したDNAと参照データベースを照合して生物を分類します。本当に未知の生物で、その種のDNAが登録されていなければ、種レベルでは一致する相手がありません。

2026年2月5日に『Biology』へ掲載された研究では、対象の種が参照データにない状況を計算機上で作り、DNA配列から属や科を推定しました。属は近い種をまとめた分類、科は複数の属をまとめる一段上の分類です。

研究で使ったのは魚類の短いTELEO配列で、属の評価対象は17属、科は50科でした。各分類には20配列以上がある条件を採用しています。新しい環境試料を採取した実験ではなく、既存のDNAデータを使った計算機上の試験です。

この条件で、属を当てた正解率は平均94.7%、科は86.5%でした。種そのものが参照データになくても、より大きな分類のどこに近いかを推定できるかを測った数字です。

「未知種を94.7%の確率で発見できる」という結果ではありません。論文は実際の環境試料でこの方法を検証しておらず、別のDNA領域や別の生物群へ同じ性能を一般化できるかも、この試験だけでは分かりません。

新しい生物グループの候補を探す研究

2026年7月2日には、深海の環境DNAを対象にした別の研究がオンライン公開されました。雑誌の巻号は8月15日付です。

この研究では、分類群という「種・属・科などの分類上のまとまり」をAIで推定します。そのうえで、既知の分類への判定に十分な確信を持てないDNAを別に回し、似たもの同士をまとめて、新しい分類群の候補を探す仕組みを提案しました。

評価には実際の深海環境DNAではなく、研究用に作ったシミュレーションデータを使っています。

シミュレーションでは、新しい分類群として用意したものの91.5%を候補として拾いました。さらに、候補として拾ったものの88.2%が実際に新しい分類群でした。

論文は、この結果を仕組みが成り立つかを見る初期検証と位置づけています。すべての定量評価がシミュレーションによるもので、実際の深海試料による追加検証が必要です。

UMA探索にそのまま使えると確認された技術ではありません。ただ、参照データにうまく当てはまらないDNAを、詳しく調べる候補として分ける研究はここまで進んでいます。

環境DNAで見つけた痕跡をどう確かめるのか

環境DNAだけでは、生物の姿や大きさまで同時に確認できません。そのため、実際の野生生物調査では別の観測方法と組み合わせる例があります。

海洋研究開発機構(JAMSTEC)によるヨコヅナイワシの調査がその一つです。

ヨコヅナイワシは2021年に新種として記載された種で、この調査は、すでに知られているその種の配列を検出したものです。UMAや未記載種のDNAを発見した事例ではありません。

JAMSTECの研究チームは6つの海山を環境DNAで調べ、3つの海山でヨコヅナイワシの遺伝子配列を確認しました。そのうち元禄海山南方へ餌付きカメラを設置しています。

2021年10月14日、水深2,091メートルでヨコヅナイワシを撮影しました。映像から算出した全長は253センチでした。

研究チームは環境DNAで生息の可能性を調べ、カメラで個体を確認しました。DNAから得た手がかりを、別の方法で確かめた例です。

カメラに未知の動物が写ったらAIは気づけるか

カメラ画像では、大量の写真から動物を見つけて分類するAIが実際に使われています。ただし、学習していない動物が写ったときに、それを自動で「未知生物」と判断するわけではありません。

野生動物調査では、動物の動きなどに反応して自動撮影するカメラトラップが使われます。数十台、数百台と設置すると、画像は数百万枚に増えることがあります。

GoogleのSpeciesNetは、カメラトラップ画像から動物を分類するモデルです。Googleによると、SpeciesNetは2019年からWildlife Insightsで運用され、6,500万枚を超えるラベル付き画像で学習しています。分類対象は2,498カテゴリです。

Googleが学習用とは別に取り分けたカメラトラップ調査の画像では、動物が写っている画像の99.4%を検出しました。そのうち83%は種レベルまで分類し、種レベルまで分類した予測の94.5%が正解でした。

99.4%はUMAを見つける確率ではありません。評価用画像の中から、動物が写っている画像を検出できた割合です。

大量処理では効果が大きく、タンザニアのSnapshot Serengetiで蓄積された約1,100万枚の画像を、SpeciesNetで数日間に処理した例も紹介されています。

学習していない動物を別扱いする研究

画像分類では、AIが学習していない種類をどう扱うかという問題があります。

Google自身も、SpeciesNetの2,498カテゴリに含まれていないオーストラリア固有の動物を、現地の研究グループが追加学習させた例を紹介しています。SpeciesNetは世界中のあらゆる動物を最初から分類できるモデルではありません。

学習時になかった種類を、既知の種類とは別に扱う研究もあります。

2022年のIEEE International Conference on Image Processing(ICIP 2022)で発表されたKimらの研究では、韓国の非武装地帯で撮影されたカメラトラップ画像を使い、学習時に含まれていないクラスを扱う画像認識手法を評価しています。

この場合の「未知」は、科学的に未発見という意味ではありません。「その画像認識モデルが学習していない種類」です。

UMA探索に画像AIを使うなら、大量の写真から通常の分類にうまく当てはまらない画像を絞る用途が考えられます。その画像が未知生物かどうかは、画像そのものと追加調査で確かめる必要があります。

正体不明の鳴き声をAIで追えるか

音では、正体が分かった鳴き声を大量の録音から探す用途にAIが使われています。

その例が「Biotwang」と呼ばれるクジラの鳴き声です。

正体不明のクジラの鳴き声「Biotwang」はどう見つかったか

2014年、オレゴン州立大学(Oregon State University)の無人の水中グライダーが、マリアナ諸島周辺で機械音のような鳴き声を記録しました。

研究者はこの音をBiotwangと呼び、ヒゲクジラ類の可能性を考えましたが、録音だけでは種を特定できませんでした。

2018年、米国海洋大気庁(NOAA)の研究者は、同じ海域で海洋哺乳類を目視しながら音を録音しました。

1カ月の調査でニタリクジラ類(Bryde’s whale)を10群確認し、そのうち9群でBiotwangも記録しました。NOAAは、この結果からBiotwangの発生源をニタリクジラ類と判断しています。

AIが録音だけから正体を当てた事例ではありません。発生源の特定には、研究者による目視と同時録音が使われました。

約20万時間の録音を機械学習で検索

Biotwangの発生源が分かったあと、研究チームは過去の録音から同じ音を探しました。

NOAAは2005年から北太平洋13地点で長期録音を続けており、保存されたデータは500TB(約500兆バイト)を超えます。録音時間は約20万時間で、連続して聞けば約23年分です。

ただし、最初からAIだけに全データを渡したわけではありません。

研究者はまず3つの長期録音データを人の手で確認し、Biotwangが出た場所に印を付けました。その記録を学習データとして、畳み込みニューラルネットワークという音の特徴を学ぶモデルを訓練し、全録音の検索に使っています。

その後も、モデルが高い確率を付けた音を人が確認して学習データを増やす作業を繰り返しています。

UMA探索に置き換えるなら、正体不明の音が一度記録されたあと、広い地域や過去の録音から似た音を探す作業に機械学習を使えます。Biotwangの研究は、その使い方を実際の海洋調査で示した例です。

「分類できない」はUMAの証拠になるのか

DNA、画像、音のどれを使っても、既知の分類にうまく当てはまらないデータは出ます。ただし、その理由は一つではありません。

調査方法AI・解析で分かることそれだけでは分からないこと
環境DNA既知DNAとの一致、近い生物群の候補姿、大きさ、未知種かどうか
カメラ動物の検出、学習済みカテゴリへの分類分類できない理由、未知種かどうか
水中音特定の鳴き声の検出、過去録音からの検索音を出した生物の正体

どの手段でも、分類できなかった理由は、参照データの不足、学習していない種類、撮影・録音条件の悪さなど複数あり、再調査や別の観測方法で確かめる必要があります。

UMA候補を「未知の生物」と確認するには何が必要か

AIで候補を絞ることと、動物を新種として記載することは別の段階です。

国際動物命名規約を管理するInternational Commission on Zoological Nomenclature(ICZN)は、2017年のDeclaration 45の補足説明で、新しい種はできる限り保存した標本を基準に記載するとしています。

標本を保存しない新種記載も規約上は認められています。ただし、Declaration 45では、標本を保存しない場合について複数の勧告を追加しています。

標本を保存しない場合には、複数の高解像度画像やDNA配列など、診断に使える特徴をできるだけ詳しく記録することが勧告されています。音声分析も、新種の記載に添える追加情報の例として挙げられています。

たとえば、湖から既知種に当てはまりにくいDNAが見つかり、同じ場所のカメラに分類できない動物が写ったとしても、それだけでは二つのデータが同じ生物に由来すると分かりません。

DNA、画像、音を組み合わせる場合も、それぞれの観測が同じ生物を示しているかを現地調査で確かめる必要があります。

FAQ

AIだけでUMAを発見できますか?

この記事で扱った技術では、AIだけでUMAの存在を確定していません。

環境DNAでは生物の痕跡を調べ、カメラ画像では大量の動物画像を分類し、水中音響では録音から特定の音を検索できます。正体を確認する段階では、再調査や別の観測方法が必要になります。

ネッシーの正体は環境DNAで分かりましたか?

分かっていません。

2018年にネス湖で250の水試料を採取した調査では、プレシオサウルスに近い生物、サメ、ナマズ、チョウザメを支持するDNAは確認されませんでした。ウナギのDNAはほぼ全域から検出されています。

環境DNAから個体の大きさは分かりません。巨大ウナギを発見したという結果ではなく、研究チームは非常に大きなウナギがいる可能性を否定できないとしています。

AIが分類できない動物なら新種ですか?

新種とは限りません。

AIが学習していない種類は、既知のカテゴリへうまく分類できない場合があります。DNAでも、参照データに対象種がなければ種まで分類できないことがあります。

未知種として確認するには、画像やDNA、標本など別の証拠を重ねる必要があります。

参考・参照元

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この記事を書いた人

AI・IT・テクノロジーの話題を中心に、気になったニュースや研究を一次資料までたどって調べています。

新しい技術を「すごい」「怖い」で終わらせず、何が起きているのか、なぜ注目されているのか、どこまで分かっているのかを、できるだけ前提から整理して書いています。

AI、サイバーセキュリティ、プログラミング、ハードウェア、そして技術が社会に与える影響が主なテーマです。
専門的な話でも、詳しい人だけのものにしないこと。分からないことは分からないままにせず、元の資料まで確認すること。
そんな姿勢で「柩のノート」を更新しています。

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