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KSK2とは?国税総合管理システムとAI・税務調査の関係

KSK2は、全国の国税局と税務署をネットワークで結び、申告・納税の情報を一元管理する国税庁の基幹システム(KSK)の次世代版です。国税庁レポート2025は、紙からデータへの移行、税目別に分かれたデータベースの統合、メインフレームからオープンシステムへの刷新を開発コンセプトに挙げています。

国税庁は2026年9月24日に国税システムの更改を行いました。国税庁レポート2025は、次世代の国税総合管理システム(KSK2)を2026年9月に本格導入する計画を示しており、e-Taxの仕様書も、この更改に合わせて「KSK2対応版」として公開されています。e-Taxは更改に合わせて、9月19日0時から9月24日8時30分までと、9月26日0時から24時までの利用停止が予告されていました。更改後にはe-Taxと税務署窓口について不具合や遅延が告知され、9月30日にも一部のお知らせが更新されています。以下は2026年9月30日時点の情報です。

KSK2の中身は、国税庁の特定個人情報保護評価書(全項目評価書。以下「評価書」)に詳しく書かれています。本文では、個人情報保護委員会が2026年6月10日付の資料として公開している版を参照しました。

目次

KSK2とは?国税総合管理システムの次世代版

旧来のKSKについて、国税庁レポート2025は、全国の国税局と税務署をネットワークで結び、地域や税目を越えて情報を一元管理することで、事務処理の高度化・効率化を図る基幹システムと説明しています。KSK2の開発コンセプトとして同レポートが挙げているのは、次の内容です。

  • データ中心の事務処理を実現するシステム(紙からデータ)
  • 税目別になっているデータベース・アプリケーションの統合(縦割りシステムの解消)
  • 独自OSを使う大型コンピュータ(メインフレーム)から、市販の汎用OSを使うオープンシステムへの刷新

評価書には、KSK2の主な機能として、申告書等の入力(AI-OCRの活用)、納税者の基本情報や関係者情報の管理、各税目の申告・申請・届出情報の管理、法定調書等の資料情報の管理、国税の債権債務の管理と納税証明書の作成、税務調査対象者の選定が並んでいます。情報の保管はオンプレミスとクラウドのハイブリッド構成で、分析用にはガバメントクラウドと、外部ネットワークに接続しない高性能パソコンも併用するとされています。

KSK2と連携するシステムとマイナンバーの扱い

評価書がKSK2の接続先として挙げているのは、情報提供ネットワークシステム、住民基本台帳ネットワークシステム、法人番号システム、eLTAX、日本銀行システム、マイナポータル、口座情報登録システムなどです。連携の中身として書かれているものには、次のようなものがあります。

  • 公金受取口座:所得税の還付申告書等で公金受取口座の登録や利用を希望した場合に、KSK2と口座情報登録システムが口座情報をやり取りし、還付金を当該口座へ還付する
  • マイナポータル:納税者から自己情報の連携依頼があると、KSK2内で源泉徴収票や年末残高等調書の情報を特定し、個人番号を含まない個人情報を連携する
  • eLTAX:地方公共団体と国税当局が、個人番号を含む課税・滞納情報を照会・提供し合う

個人番号を取り扱うファイルのうち、収受・入力ファイルや所得税ファイルなど多くは、対象となる本人の数が「1,000万人以上」の区分になっています。

AI-OCRで書面の申告書をデータ化する(全1,936帳票)

e-Taxの仕様書等の案内ページによると、これまで一部の書面をOCRで読み取っていたところに、AI-OCRを導入します。書面で提出された申告書や申請書等を、フリーピッチ枠(マス目に区切られていない記入欄)の文字も含めて読み取り、データ化とイメージ化を行います。読み取りに適した形にするため様式が改定され、2026年9月2日には、AI-OCR化の対象となる全1,936帳票のレイアウトの確定版が公開されました。

評価書には、書面をAI-OCRでデータ化(イメージ化・テキスト化)してイメージを格納し、テキストをデータベースへ連絡して、国税債権等の一元管理と、税務調査等に使う分析に活用する流れが書かれています。AI-OCRの使用時期については、法定調書などを扱う資料調査ファイルの備考に、令和4年度からクラウド環境上のAI-OCRも併用してデータ入力をしているとあり、収受・入力ファイルの備考には、令和8年度からAI-OCRも併用してデータ入力をする予定とあります。

KSK2は「AIが税務調査の対象を決めるシステム」なのか

評価書は、KSK2が決算事績や資料情報などの蓄積した情報を基に多角的な分析を行い、税務調査対象の選定や滞納整理対象者の抽出を「支援する」と書いています。事務の内容の欄では、申告漏れの可能性が高い納税者等の判定や、滞納者の状況に応じた対応の判別も、データ分析で行うとしています。税務調査の対象選定がKSK2の機能に含まれることは、公表資料で確認できます。

AIについては、システム機能の欄に、課税・徴収の効率化・高度化のために、各種データの分析等とAIの開発・活用を行うという趣旨の記載があります。どの処理にAIを使うかまでは書かれていません。評価書の記載を処理の段階ごとに並べると、AIへの言及の有無は次のようになります。

段階評価書に書かれていることAIへの言及
書面のデータ化書面をAI-OCRでデータ化し、イメージとテキストを格納するあり(AI-OCR)
データの蓄積・分析蓄積した情報を基に多角的に分析する。申告漏れの可能性が高い納税者等の判定や、滞納者への対応の判別にもデータ分析を使う「データ分析・AI機能」「AIの開発・活用」の記載はあるが、対象となる処理の記載はない
調査対象の選定所得税ファイルでは、業種・業態・事業規模などの観点から分析して選定する。資産税ファイルでは、調査事績や申告事績と法定調書・資料情報との関連性を分析して選定する選定を説明する箇所にAIの語はない
更正・加算税の賦課決定申告内容が法律の規定に従っていなかった場合に行う(「権利利益に影響を与え得る決定」の欄)この欄にAIの語はない

要点

評価書でAIの語が出てくるのは、書面のAI-OCR、システム機能の欄の「AIの開発・活用」、分析の流れを示す図の「データ分析・AI機能」の3か所です。調査対象の選定と、更正・加算税の決定を説明する欄には出てきません。

評価書は、ファイルごとに「情報の統計分析」と「権利利益に影響を与え得る決定」の欄を分けています。所得税ファイルでは、調査対象の選定が前者に、更正または加算税の賦課決定が後者に書かれており、選定と処分は別の欄に置かれています。収受・入力ファイルの統計分析の欄には、個人の属性・特徴等に着目した分析は行わず、受付件数等の統計処理のみ行うと書かれていて、選定に使うファイルとは書き分けられています。

調査対象の選定にAIを使っていることは、評価書とは別の資料で国税庁が公表しています。2025年12月の「令和6事務年度 法人税等の調査事績の概要」によると、税務署所管の法人については、AIを活用した予測モデルで調査必要度の高い法人を抽出し、モデルが判定した不正パターンに申告書や資料情報の分析を加えたうえで、調査を行うかどうかを調査官が最終的に判断しています。この予測モデルがKSK2の中で動くのか、別の分析環境で動くのかは、どちらの資料にも書かれていません。

分析の作業については、評価書に、税務データ分析とその実用化に係る支援業務を外部に委託すると書かれています。委託先は国税庁のホームページに掲載するとされ、国税当局が用意した高性能パソコンで作業し、再委託は原則しないという条件が付いています。

国税システムの更改後に公表された不具合と遅延

e-Taxのお知らせと国税庁の告知のうち、9月24日以降に公表された主なものを時系列で並べます。以下は9月30日時点の告知に基づきます。最新の状況はe-Taxのお知らせ一覧を確認してください。

掲載日告知の内容告知上の状態(9月30日時点で確認できたもの)
9月24日(28日・29日更新)税務署窓口で、現金領収や納税証明書の交付などに相当の時間がかかっている。e-Taxで請求した納税証明書も即座には交付できず、電子交付を希望しても書面交付になる場合がある9月29日の更新でも復旧の記載はない。復旧したら国税庁ホームページで連絡するとされている
9月24日インターネットバンキングによる納付の完了表示の不具合9月25日8時30分時点で解消
9月24日e-Taxからマイナポータル経由でログインできない事象9月25日8時30分時点で解消
9月24日e-Taxの障害対応のための緊急メンテナンス(9月25日0時〜4時、作業状況により前後)実施の告知のみで、終了の告知は確認できず
9月25日9月25日にe-Taxの一部機能が利用できない状況解消(9月27日更新)
9月28日(29日更新)9月24日に更新したe-Taxソフトで、バージョンアップが正常に認識されない不具合9月26日13時頃に解消のための更新を行い、再ダウンロードを案内。この状態のソフトで申告・申請しても内容に誤りは生じないとしている
9月28日(30日更新)9月28日8時30分頃から、e-Taxからe-Govホームページを経由するインターネットバンキングで納付ができない事象解消(9月30日更新)
9月29日(30日更新)9月24日8時30分頃から9月29日8時30分頃まで、インターネットバンキングによる手数料納付ができない事象いったん解消と告知されたが、9月30日の追記で、9月24日〜28日に「納税証明書の手数料納付のお知らせ」がメッセージボックスに格納された利用者は、引き続きインターネットバンキングで納付できないと案内

各告知の文面は、緊急メンテナンスを「障害対応のため」と説明し、9月28日の納付エラーは、当初は原因を調査中とし、9月30日の解消の告知でも原因を示していません。KSK2、e-Tax、金融機関やe-Govとの接続のどこに原因があるかは、これらの告知から分かりません。窓口の遅延については、国税庁が、更改は完了したと述べたうえで、窓口業務に必要なシステムの稼働に問題が生じていると説明しています。手数料納付については、9月29日にいったん解消が告知されましたが、9月30日の追記で、一部の利用者は引き続きインターネットバンキングで納付できないことが案内されています。

更改前のe-Taxのお知らせ一覧にも、2026年の不具合告知が出ています。8月17日の午前中には、ダイレクト納付やインターネットバンキングによる納付ができない事象があり、12時時点で解消と告知されました。2月と3月にはe-Taxにログインしづらい事象、2月にはマイナポータル連携機能の不具合、7月にはマイナポータル経由でログイン等ができない事象について、それぞれ解消の告知が出ています。9月の事象を更改の影響と結びつけられるかは、公表資料だけでは判断できません。

不具合や遅延の状況を公式資料で確認する方法

e-Taxのお知らせ一覧に、告知の掲載日と更新日、解消の有無が載っています。窓口手続の遅延については、国税庁が、電子申請をする場合にマイページの基本情報の電話番号欄へ電話番号を登録するよう案内しています。登録がないと税務署から連絡できず、手続を進められないとされています。9月28日の納付エラーの間、e-Taxは、e-Govを経由せずに各金融機関のインターネットバンキングから直接納付するか、ATMで納付する方法を案内していました。

公表資料から分からないこと

  • 調査対象の選定に使う具体的な条件、スコア、モデル
  • 国税庁が公表しているAIの予測モデルと、KSK2との関係
  • AI-OCR以外で、KSK2のどの処理にAIが使われているか
  • 更改後に、調査件数や選定の精度がどう変わるか
  • 不具合の原因と、窓口の遅延、一部の納税証明書の手数料納付の復旧時期

よくある疑問

KSK2はいつから稼働していますか?

国税庁は2026年9月24日に国税システムの更改を行い、更改は完了したと説明しています。国税庁レポート2025はKSK2を2026年9月に本格導入する計画を示しており、e-Taxの仕様書も「KSK2対応版」として9月24日から受付を始める予定とされていました。KSK2が稼働したと明言した国税庁の文書は、9月30日時点で確認できていません。

KSK2とe-Taxは同じシステムですか?

同じものではありません。e-Taxは電子申告や電子納税などを受け付けるシステムで、そこで受け付けた申告等の情報がKSK2に記録・管理されます。評価書はKSK2を、電子申告や電子納税など税務行政のICT化に不可欠な情報通信基盤でもあると位置づけています。

KSK2にはマイナンバーが入っていますか?

評価書に、KSK2は個人番号を取り扱うと書かれています。公金受取口座への還付のための口座情報登録システムとの連携、マイナポータル経由の自己情報の連携、eLTAXを通じた地方公共団体との課税・滞納情報のやり取りにも使われます。

AIが税務調査の対象を決めるのですか?

国税庁は、税務署所管の法人について、AIの予測モデルで調査必要度の高い法人を抽出し、調査を行うかどうかは調査官が最終的に判断すると公表しています。KSK2の評価書には、調査対象の選定を支援する機能とデータ分析による判定が書かれていますが、選定の説明にAIの語はありません。

更改で税務調査は増えますか?

更改後の調査件数や選定への影響を示した公表資料は、確認できていません。

不具合の最新状況はどこで確認できますか?

e-Taxのお知らせ一覧と国税庁のホームページです。国税庁は、窓口手続の遅延が復旧したら国税庁ホームページで連絡すると案内しています。

参考・参照元

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この記事を書いた人

AI・IT・テクノロジーの話題を中心に、気になったニュースや研究を一次資料までたどって調べています。

新しい技術を「すごい」「怖い」で終わらせず、何が起きているのか、なぜ注目されているのか、どこまで分かっているのかを、できるだけ前提から整理して書いています。

AI、サイバーセキュリティ、プログラミング、ハードウェア、そして技術が社会に与える影響が主なテーマです。
専門的な話でも、詳しい人だけのものにしないこと。分からないことは分からないままにせず、元の資料まで確認すること。
そんな姿勢で「柩のノート」を更新しています。

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