Praxis(プラクシス)は、2019年に設立された米ニューヨーク拠点のスタートアップです。自らを「世界初のデジタル国家(Digital Nation)」と名乗り、オンラインで集めた会員を、現実の都市の住民にすることを目指しています。
2026年9月、そのPraxisが南米ウルグアイで最初の都市計画を発表しました。掲げるのは「AGI(汎用人工知能)が人間の仕事の多くを担う時代のための都市」。しかし公式文書を読み進めると、話は都市開発では終わりません。
この記事では、Praxisが何者なのかを、AI、不動産、思想、そして「国家」の4つの面から追っていきます。
1. 「世界初のデジタル国家」がウルグアイに降り立つ
Praxisの公式サイトに、1枚の工事写真が載っています。ラプラタ川を見下ろす建物の屋上で、ヘルメット姿の作業員たちが型枠を組んでいる写真です。キャプションには「+Colonia、2026年9月。最初の住民はこの建物に住む」とあります。撮影したのはニューヨーク・タイムズ(NYT)です。
「世界初のデジタル国家」が最初に手にする風景は、じつは他社が開発している宅地の建設現場でした。この落差に、Praxisという団体を理解する鍵があります。
NYTが報じた「ウルグアイ計画」
2026年9月22日、NYTは「テック・ユートピア運動のPraxis、ウルグアイに居場所を見つける」という見出しの記事を掲載しました。世界各地を巡った末に、暗号資産の支援を受けた「デジタル国家」が、ウルグアイで都市建設の契約を結んだという内容です。
同じ日にPraxisも正式発表を出しました。舞台は、世界遺産の旧市街で知られるコロニア・デル・サクラメントに隣接する都市開発「+Colonia(マス・コロニア)」です。ブエノスアイレスからフェリーで約1時間、ラプラタ川沿いの515ヘクタールの土地で、2022年から開発が進んでいます。
Praxisの発表によると、計画の骨子は次のとおりです。
- 最初の住民は2027年半ばに入居し、+Coloniaの既存の建物に住む
- 住宅、リゾート、レストラン、ウェルネス施設、アトリエ、ギャラリー、音楽・パフォーマンス空間を整備する
- 若いアーティストや起業家を招く「フェローシップ」を設ける
- 今後3年間で10億ドル規模の投資を「動員」する
「10億ドル」は集まったお金ではない
見出しだけを読むと、Praxisが10億ドルを投じるように見えます。しかし公式発表の表現は「mobilize(動員する)」です。
+Coloniaを率いるアルゼンチンの実業家エドゥアルド・バスティッタ氏は、Praxis関連の住宅開発が約10億ドルの投資を生みうると説明しています。その前提は、Praxis会員のうち約2,700人が移住と投資の意思を正式に示したことです(ComexLatam)。
つまり10億ドルは、会員が今後住宅を買うことなどを積み上げた見込み額です。
さらに、土地の購入もまだ成立していません。バスティッタ氏によれば、区画の分割など購入前の手続きが残っており、最初の取得は2027年前半の見込みです(egu.org.uy)。
NYTも、+Coloniaとの合意は初期段階で、大部分に拘束力がないと伝えています。
では、このPraxisとは何者なのでしょうか。
2. AIが仕事を担う世界で、都市は何のためにあるのか
Praxisの都市構想は、AIが人間の仕事の多くを担うようになった後の世界を前提にしています。
公式発表が想定するのは、AGIが今日の経済的に生産的な仕事の多くをこなせる未来です。知能がありふれたものになり、仕事が場所に縛られなくなれば、人が都市に集まる理由も変わる。そのとき住む場所を決めるのは、美しい環境や建築、信頼できるコミュニティ、豊かな文化生活になる、というのがPraxisの見立てです。
なお、AGIには業界で統一された厳密な定義はありません。ここでいう「AI後」は、Praxis自身が想定する「人間の経済的に生産的な仕事の多くをAIが担える状態」を指します。
日本に置き換えると分かりやすいかもしれません。「会社があるから東京に住む」「仕事があるから都市に集まる」という前提が、AIによって崩れるかもしれない。そのとき都市は何を売りにするのか、という問いです。
Praxisの答えは、ルネサンス期のフィレンツェです。5世紀前、銀行業と商業が生んだ富がフィレンツェをルネサンスの中心地の一つにしたように、AIが生む富で芸術家、建築家、研究者を支えたい。発表では、住宅の販売収入の一部を芸術家への助成やレジデンスに回す構想も示されています。
CEOのドライデン・ブラウン氏は「AGIは世界がかつて見たことのない規模の富を生みうる」と述べ、その富をふさわしい場所と制度に変えたいと語っています。
ただし、AIが生む富がそのまま広く行き渡るとは限りません。AIが知的労働の多くを担った場合に、経済成長と働く人の所得がどう変わるかは、Anthropicの2030年経済シナリオでも別の角度から検討されています。
住宅、リゾート、芸術支援だけなら、高級住宅地と文化コミュニティを組み合わせた開発です。しかしPraxisは、遅くとも2022年には、都市の先に「国家」を構想していました。
3. Praxisとは何か——住民を先に集め、都市を後からつくる
創業者ドライデン・ブラウンという人物
Praxisは2019年、ドライデン・ブラウン氏とチャーリー・キャリナン氏が「Bluebook Cities」という名前で始めた会社です。
ブラウン氏はカリフォルニア州サンタバーバラ出身。競技サーフィンのためにホームスクーリングで育ち、ニューヨーク大学を中退しました。その後ヘッジファンドのアナリストとして働き、同僚だった元大学アメフト選手のキャリナン氏と出会います。現在30歳で、都市開発の実務経験を積んできた人物ではありません。
2019年、2人はキャリナン氏がゴルフ大会で得た賞金でナイジェリアとガーナへ飛び、ガーナの副大統領に金融センターの建設を提案したと、2023年のNYTなどが報じています(NYT)。
ここから、7年に及ぶ「都市探しの旅」が始まりました。
資金面では、暗号資産ファンドのParadigmが最大の出資者で、ピーター・ティール氏が支援するPronomos Capital、サム・アルトマン氏が兄弟と立ち上げたApollo Projects、「ネットワーク国家」を提唱したバラジ・スリニヴァサン氏らも出資者に名を連ねていると報じられています。
普通の都市開発と「順序が逆」
Praxisの最大の特徴は、都市のつくり方の順序です。
一般的な都市開発は、土地を確保し、インフラを整え、住宅を建ててから住民を募集します。Praxisはその逆を行います。
- 価値観を共有する人をネット上で集める
- 共通の文化を持つコミュニティを育てる
- 移住の意思を表明してもらう
- その「需要」を材料に、土地、資金、開発パートナーを探す
- 現実の都市をつくる
公式サイトはこれを「オンラインで始まり、共有された文化で人々を結びつけ、AIを使って集団行動を促し、現実世界に新しい都市をつくる国家」と説明しています。
会員向けアプリには、AIが会員同士を紹介する機能や、共同で目標に取り組む「キャンペーン」があり、「Steel」会員には「Praxis Steel Visa」というビザ風のカードが付きます。現在の「Commit to Move」キャンペーンでは、会員から移住意思を集めています。
そして公式サイトのトップには、こう書かれています。
Bitcoin gave our generation its own currency.
We are using AI to create our own country.
(ビットコインは私たちの世代に独自の通貨を与えた。私たちはAIを使って自分たちの国をつくる)
Praxisは、この「国」を単なるコミュニティの比喩ではなく、政治制度を持つ構想として説明しています。
4. 街ではなく「国家」を——ネットワーク国家からNetwork Empireへ
Praxisの「国」は、ウルグアイ計画のために急に生まれた言葉ではありません。7年間の歩みを並べると、看板は何度も掛け替えられてきた一方で、「都市+政治共同体」という方向は残っています。
7年間の「都市探し」と「国家構想」
- 2019年 Bluebook Citiesとして創業。ガーナで金融センター構想を提案
- 2022年 シリーズAの投資家向け資料で、構想中の都市を「cryptostate(暗号国家)」と表現(2023年のNYT報道による)
- 2023年 地中海に人口1万人の都市をつくる計画を掲げる
- 2024年10月 5億2500万ドルの資金の「コミットメント」を発表。ただし大半は、暗号資産ファンドGEM Digitalによる、事業の進捗を条件とした枠だった
- 2024年11月 「Praxis World Congress」を開き、「Declaration of Ascent(上昇の宣言)」に署名。自らを「最初のNetwork Empire(ネットワーク帝国)」と宣言
- 2024〜25年 グリーンランドを候補地に。ブラウン氏が現地を訪れ、政治家と面会したと報じられる
- 2025年4月 キーウやアテネなどを視察。1万エーカー以上の土地と、「イーロン・マスク向き」の労働法制を求めているとBloombergが報道
- 2025年6月 米宇宙軍のヴァンデンバーグ基地近くに都市「Atlas」をつくる構想をVanity Fairに語る
- 2026年9月 ウルグアイの+Coloniaを選んだと発表
「ネットワーク国家」とは
この流れの背景にあるのが、元Coinbase CTOのバラジ・スリニヴァサン氏が提唱した「ネットワーク国家(Network State)」という考え方です。
ネット上で強い共通意識を持つ共同体をつくり、クラウドファンディングで世界各地に土地を手に入れ、最終的には既存国家から外交的な承認を得ることを目指します。スリニヴァサン氏はPraxisの出資者でもあります。
同じ系譜の試みはほかにもあります。ホンジュラスの特別経済区制度を使った民間都市「Próspera」、2023年にモンテネグロで2カ月間だけ開かれたポップアップ都市「Zuzalu」、ナイジェリアの「Itana」などです。
Praxisもかつては「世界初のネットワーク国家」を名乗っていました。
「国家」から「帝国」へ
Praxisはその先へ進もうとしました。
2024年11月の「Declaration of Ascent」は、米国の独立宣言をなぞった文体で、既存の政治体制は地理的な偶然に縛られ、衰退を管理しているだけだと批判します。
そのうえで「Network Empire」という新しい文明の形を打ち立てると宣言し、クラウド、宇宙、そして超越への「3つの上昇」を掲げました。
署名の場でブラウン氏は、国家はルールの中で動くが、帝国はルールを書く、という趣旨の演説をしています。「ネットワーク国家の時代は序章にすぎない」とも述べました(公式の演説録)。
その後、Praxisは公式サイトから「ネットワーク国家」への言及を消し、現在は「Digital Nation」を名乗っています。
ただ、オンラインで共同体をつくり、現実の都市と自治的な政治制度へつなげようとする基本的な方向性は残っています。公式サイトは今も自らを「An autonomous political entity(自律した政治的実体)」と呼び、AIで会員の希望を把握し、共通の目標を調整し、憲法と人間の監督の下で動く「自律的な国家」を目指すと書いています。
研究者はどう見ているか
こうした構想には、学術界から強い批判があります。
監視研究者デイヴィッド・ムラカミ・ウッド氏は、2025年に学術誌『Dialogues on Digital Society』に寄せた論考で、Praxisを「デジタル権威主義的政体」としてのポスト・スマートシティの一例として取り上げました。
資本家や企業による都市の統治が、民主的な統制の外に出ていく危険を指摘しています(SAGE)。
では、ウルグアイにつくる街は、この「国家」なのでしょうか。その前に、Praxisが都市開発ではあまり見かけない言葉を使っている点を見てみます。
5. 「精神」「文明」「西洋」——都市開発では聞かない言葉
Praxisの公式サイトには、同じ団体が書いたとは思えないほど温度の違う文章が並んでいます。
| ウルグアイ計画の公式発表(2026年9月) | 論考「Sovereign Intelligence」 | |
|---|---|---|
| AIについて | AGIが生む富を、芸術や文化に回す | AIは人類史上最大の権力移転を起こしている |
| 目指すもの | 世界最高のリゾート水準の住まいと文化生活 | 「文明の心を制して、その魂を救う」 |
| 社会への姿勢 | ウルグアイの労働者、芸術家、教育機関との協働 | 既存のエリートは雇用を国外に出し、労働者を輸入して文化を薄めたと批判 |
| 統治 | ウルグアイの憲法・法・民主制度の枠内で運営 | 西洋の「技術的・精神的な主権」を守る |
「Sovereign Intelligence」が語る世界
副題に「知能の時代の西洋文明」と掲げる「Sovereign Intelligence」は、経済論として始まります。
AIが人間の労働をほぼすべて置き換え、賃金に流れていたお金はAIを持つ者に集まる。そのとき社会の行方を決めるのは、AIを支配する者の価値観だ、という主張です。
しかし論考はそこから、GDPを最優先する「経済的唯物論」を批判し、市場のために「家族、国、神」を犠牲にしてよいのかと問いかけます。
さらに中世の世界観を引き、世界を物質・精神(心)・霊的な領域の3層に分けます。AIは物質の世界を支配できても、霊的な世界には決して届かない。だから人間には、両者の橋渡し役である「ポンティフェクス(pontifex)」としての役割が残る、というのです。
論考は、あらゆる永続する文明には「spiritual axis(精神の軸)」があると述べ、最後にPraxisを「AIが支配する世界で西洋の精神的中心を守ろうとする人々のための、最初のDigital Nation」と位置づけます。
2024年の「Declaration of Ascent」にも、かつて戦士の王たちが聖杯を求めたように、神の秩序と一致した帝国を築く、という一節があります。
こうした文章を読むと、Praxisを不動産会社、AI企業、政治団体のどれか一つで説明するのは難しくなります。都市という器を使って、特定の文明観を実装しようとする思想運動として見ることもできるでしょう。
誰が「国民」に選ばれるのか
文明を語る共同体は、必然的に「誰を入れるか」という問いを抱えます。この点について、過去の報道は気になる内容を伝えています。
2023年のNYTは、社内のブランドガイドが「伝統的なヨーロッパ/西洋の美の基準」を称えていたと報じました。
同じ年のMother Jonesは、元社員の証言と社内資料をもとに、会員や将来の住民の選抜にイタリアの伝統主義思想家ユリウス・エヴォラの「4つの機能的階級」を参考にすべきだとするスライドがあったと報じています(Mother Jones)。
いずれも匿名の証言や内部資料に基づく報道で、現在の選抜方法がどうなっているかは公表されていません。
Praxisが「共有された文化」を共同体の条件に置く以上、どこまでの価値観の一致を求め、誰を受け入れるのかという問題が生じます。その線を誰がどう引くのかは、この計画を評価するうえで避けて通れない問いです。
6. ウルグアイで「デジタル国家」は何になるのか
ゼロから建てる都市ではない
まず押さえておきたいのは、Praxisが荒野に独立都市をゼロから建てるわけではない、という点です。
+Coloniaは、バスティッタ氏の父が1980年代に取得した土地に、2022年から開発が進む都市計画です。
Praxisの第1期計画では、約35万平方メートルの建築可能面積が想定されています。+Colonia側は、これを計画する都市開発全体の2割強に相当すると説明しています。
35万平方メートルは+Coloniaの515ヘクタールという敷地面積の2割を意味する数字ではなく、建物として開発できる床面積側の数字です。
Praxisは数年かけて段階的に土地を買い、それまでの間、最初の住民は+Coloniaで建設中の建物に住みます。ブラウン氏自身も、2026年12月にウルグアイへ移住する予定だと報じられています(Montevideo Portal)。
受け入れ側が見ている「Praxis」
法的な位置づけははっきりしています。
Praxisの発表は、住民の自治的な仕組みはすべてウルグアイの憲法・法・民主制度の枠内で運営し、既存の公的機関を補完するものだと明記しています。
バスティッタ氏も、法的にはあくまで大規模な宅地開発であり、自治領ではないと説明しています(Política Argentina)。ブラウン氏自身、独自の統治システムはウルグアイ進出の条件ではないと述べています。
思想上の「Digital Nation」と、ウルグアイで建てる街の法的地位は、別のものだということです。
ウルグアイ政府の見方も興味深いものです。
9月24日、国連総会でニューヨークを訪れていたヤマンドゥ・オルシ大統領はブラウン氏と会談しました。ブラウン氏はXに、Praxisのロゴ入りの帽子を手にした大統領との写真を投稿しています(Montevideo Portal)。
大統領は会談前、この計画を「本当の意味でのノマドである新世代のテクノロジー労働者」を呼び込む、コロニアでの戦略の一部だと位置づけていました。
一方、帰国後の会見では、計画はウルグアイの定める規範を守らなければならないと述べ、「何よりもまず都市開発だ」と説明しています(Telenoche)。
同じプロジェクトの上に、2つの物語が重なっています。
Praxisにとっては「デジタル国家」を初めて現実の場所に落とし込む拠点。ウルグアイにとっては、海外のテック人材と投資を呼び込む都市開発です。
地元からの疑問
ただし、地元の受け止めは一様ではありません。
コロニアでは以前から、約30人の住民が「Más o Menos Colonia(マス・オ・メノス・コロニア)」というグループをつくり、+Coloniaの環境への影響や住民参加の不足を批判してきました(Colonia Multimedia)。
住民が計画を知った時点で、土地利用や建物の規模をどこまで変更できる段階だったのかという問題は、日本のデータセンター建設と住民参加をめぐる事例でも争点になっています。
Praxisの進出発表後には、大統領と同じ与党・拡大戦線(Frente Amplio)のコロニア県議員が、ルールの不透明さに警戒を示しました。+Colonia全体についても、公聴会が開かれなかったと不満を述べています(El Popular)。
「退出」は社会に依存している
研究者のサンハ・ホン氏は、2026年に学術誌『Urban Studies』で発表した論文で、Praxisなどの新しいテック都市に共通する論理を「囲い込み(enclosure)と退出(exit)」と呼びました(DOI)。
既存社会から「退出」するという夢は、実際には公共の制度や資源を「囲い込む」ことに依存しており、計画のリスクを負うのは結局その社会の側だ、という批判です。
ホン氏は、19世紀末の米国で鉄道車両会社が築いた企業城下町プルマンとの類似も指摘しています。
この指摘は、今回のウルグアイ計画を見るうえでも示唆的です。
Praxisがウルグアイを選んだ理由として挙げたのは、政治的・経済的な安定と「強固な民主的制度」でした。既存国家の制度から自由になりたいと語ってきた団体が、最初の拠点に選んだのは、制度の安定した民主国家だったのです。
数字は本当か
計画の実現性にも疑問が残ります。
Praxisがこれまで公表してきた数字は、時期や定義が異なるため、単純には比較できません。
たとえば会員数は、2024年4月時点の公式サイトでは2,043人でしたが、2026年1月には15万人超と自己申告しています。
また過去には、将来の移住希望者として1万2000人という数字が報じられた一方、今回ウルグアイへの移住・投資の意思を示した人数は約2,700人とされています。
2024年に発表した「5億2500万ドル」も、大半は事業の進捗を条件とする資金枠でした。
いずれもPraxis側の自己申告を含み、外部からすべて検証された数字ではありません。欧州の論壇誌Le Grand Continentは、ブラウン氏がここ数年大規模な構想を相次いで発表してきたことと、今回の合意に拘束力のない部分があることを指摘しています(Le Grand Continent)。
一方、今回はこれまでと違う点もあります。具体的な開発パートナーと土地があり、受け入れ国の大統領が会談に応じ、最初の住民が住む建物も建設中です。
ウルグアイ計画は、Praxisがオンライン上の思想とコミュニティを実際の街へ移せるかを見る、最初の具体例になります。
7. AI後の世界に、都市は何のためにあるのか
AIが仕事の多くを担うようになったとき、人間は何のために都市に集まるのか。
Praxisの答えは、文化、芸術、人間関係、そして共同体のため、というものでした。仕事ではなく文化が人を集めるという見立て自体は、AI時代の都市を考えるうえで検討する価値のある問いです。
ただしPraxisの場合、その共同体には最初から「国家」や「文明」、そして「西洋の精神」という輪郭が与えられています。
共同体を誰が設計し、誰が統治し、誰が入ることを許されるのか。AI後の都市という問いは、こうした古くからある政治の問いと切り離せないことを、Praxisは図らずも示しています。
現在の+Coloniaは、ウルグアイの法律の下にある都市開発です。それが将来、Praxisの言う「Digital Nation」にどこまで近づくのか。あるいは、裕福なテック関係者のためのリゾートにとどまるのか。
最初の住民の入居は2027年半ばの予定です。
ラプラタ川を見下ろすあの屋上に人が住み始めたとき、Praxisが何をつくろうとしているのかが、理念ではなく現実の街として見え始めるはずです。
よくある質問(FAQ)
Q. Praxisは本当に国家なのですか?
いいえ。Praxisは米国の民間企業で、「Digital Nation(デジタル国家)」は自称です。ウルグアイの計画も、ウルグアイの憲法と法律の下で運営されると公式に説明されています。
ただし長期的には「自律した政治的実体」を目指すと公式サイトに明記しています。
Q. 10億ドルはもう集まったのですか?
いいえ。「今後3年間で10億ドルの投資を動員する」という計画で、会員の住宅購入などを積み上げた見込み額です。土地の購入もまだ成立していません。
Q. ネットワーク国家(Network State)とは何ですか?
元Coinbase CTOのバラジ・スリニヴァサン氏が提唱した構想です。ネット上で共通意識を持つ共同体をつくり、世界各地に土地を得て、最終的に既存国家からの承認を目指します。
Praxisはかつてこれを名乗り、現在は「Digital Nation」と称しています。
Q. いつから住めるのですか?
Praxisは、最初の住民が2027年半ばに+Coloniaの既存の建物へ入居する予定だとしています。
参考資料
Praxis公式
- Praxis Announces Uruguay as Location for Planned $1 Billion Investment at +Colonia(公式発表、2026年9月22日)
- Praxis公式サイト
- Praxis Uruguay
- Sovereign Intelligence
- Declaration of Ascent
- World Congressでの演説録
報道
- The New York Times「Tech-Utopian Movement Praxis Has Found a Home in Uruguay」(2026年9月22日)
- The New York Times「Who Would Give This Guy Millions to Build His Own Utopia?」(2023年12月12日)
- Bloomberg「Altman-Backed Praxis Scouts Kyiv, Athens for Tech Utopia Base」(2025年4月8日)
- Vanity Fair「Welcome to Praxis: The High-Tech, High-Testosterone Eden That Will Save the World」(2025年6月4日)
- El Observador:Orsi大統領とBrown氏の会談
- Telenoche:Orsi大統領「ウルグアイの規範を守るべき」
- Montevideo Portal:会談と帽子の写真、Brown氏の移住予定
- egu.org.uy(Forbes Uruguay引用):35万㎡と土地購入の状況
- ComexLatam:2,700人と+Coloniaの概要
- Política Argentina:法的には宅地開発
- Le Grand Continent
- Colonia Multimedia:住民グループの批判
- El Popular:拡大戦線のコロニア県議員
- Mother Jones(2023年9月)
学術
