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米世論調査、AIの人類滅亡リスクに63%が「中程度以上」と回答

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米国人の63%が「中程度以上のリスク」と回答

2026年9月13日から15日にかけて、ロンドンを拠点とする調査会社Public Firstが米国成人2,064人を対象にオンライン世論調査を実施しました。全体の誤差は±2.2ポイントです。

POLITICOが9月16日に公表した結果では、63%が「高度なAIには、人類を滅ぼす少なくとも中程度のリスクがある」と回答しました。2024年大統領選でカマラ・ハリス氏に投票した人では70%、ドナルド・トランプ氏に投票した人でも60%に達しています。

63%という数字は、「63%がAIによる人類滅亡を確信している」という意味ではありません。質問はリスクの大きさを尋ねたもので、人類滅亡を起こり得る危険としてどの程度評価しているかを示しています。

それでも、失業や偽情報ではなく「人類の存続」を直接扱った質問で過半数を大きく超えたことは、現在の米国でAIへの警戒がどこまで広がっているかを見る材料になります。

調査の直前にAI企業トップの警告が相次いだ

調査が行われた9月13日から15日は、AI安全性をめぐる議論が大きく動いた時期と重なります。

Anthropicのダリオ・アモデイCEOは、最先端AIの能力向上について業界が歩調を合わせて速度を落とす必要性を訴えました。OpenAIのサム・アルトマンCEOとイーロン・マスク氏も、AI開発のペースを落とす考えを支持しています。

この一連の経緯と、AI開発を減速させたい企業側と米中技術競争との矛盾については、当サイトの「AI企業は減速を訴える 米中競争が生む囚人のジレンマ」でも詳しく整理しています。
AI企業は減速を訴える 米中競争が生む囚人のジレンマ

その数日前には、OpenAIとAnthropicの両方でモデルの事前学習研究に携わったJacob Coxon氏がAnthropicを退職しました。Coxon氏は、両社が自己改善する超知能の開発を急いでいるとして、「gambling with our lives(私たちの命を賭けている)」と批判しています。

AIによる人類滅亡の確率を「10%以上」と見積もったAnthropic研究者Evan Hubinger氏の発言と、その数字がどこから出てきたものなのかについては、別記事で一次資料まで追っています。
「人類滅亡10%」と語ったAnthropic研究者、その背景と根拠を調べてみた

こうした発言が報じられる中でPublic Firstの調査は実施されました。

調査では、AI企業の内部関係者が「AIは私たち全員を殺すかもしれない」と警告していることについて、51%の米国成人が「本人たちは本気でそう信じている」と回答しています。製品を強力に見せるためのマーケティングだと考えた人は26%でした。

今回の63%という数字が今後も維持されるのかを見るには、同じ質問による継続調査が必要です。

米国のAIへの不安は今回突然生まれたものではない

「人類滅亡」という質問は今回のPOLITICO Poll特有のものですが、AI全般への不安についてはPew Research Centerが2021年から同じ質問を続けています。

「日常生活でAIの利用が増えることについて、期待より不安を感じる」と答えた米国人の割合は、2021年の37%から2023年には52%へ上昇しました。その後も2024年51%、2025年50%、2026年52%と半数前後で推移しています。2026年に「不安より期待が大きい」と答えた人は9%でした。

年期待より不安が大きい不安と期待が同程度不安より期待が大きい
2021年37%45%18%
2022年38%46%15%
2023年52%36%10%
2024年51%38%11%
2025年50%38%10%
2026年52%37%9%

出典:Pew Research Center。2026年調査は6月22〜28日に実施。

党派別の動きも一定ではありません。2021年には共和党・共和党寄りの45%が「期待より不安」と回答し、民主党・民主党寄りは31%でした。2026年には共和党側49%、民主党側56%となり、関係が逆転しています。

今回のPOLITICO Pollでハリス投票者70%、トランプ投票者60%となった結果も、AIへの警戒がどちらか一方の党派だけに限られていないことと重なります。

トランプ支持者でも44%が開発の一時停止を支持

Public Firstは、より高度なAIモデルの開発を今後どう進めるべきかも尋ねています。

全体では、開発を減速または一時停止する方向を支持する意見が優勢でした。中国など他国との競争で不利になる可能性があっても、より責任ある開発を選ぶ考えにも支持が集まっています。

トランプ投票者だけを見ると、開発の一時停止を支持した人は44%、AIがもたらす利益を理由に開発継続を支持した人は40%。ほぼ二分されています。

トランプ大統領本人は開発を進める立場です。

9月14日には、AI安全性をめぐる警告を「HOAX」と表現し、AIの進歩を遅らせれば中国などの競争相手を利すると主張しました。既存の法律や規制手段でAI企業への対応は可能だとの認識も示しています。

支持者の60%が人類滅亡を中程度以上のリスクと評価し、44%が開発の一時停止を選んでいる一方、大統領は開発を続ける。この差は、AIが米国政治の争点になった場合に共和党内でも議論が割れる余地を残しています。

政治家が語るのは「人類滅亡」だけではない

米議会で扱われているAIリスクは、人類滅亡だけではありません。

民主党のクリス・マーフィー上院議員はPOLITICOに対し、AIが子どもや文化に与える影響と、数百万規模の雇用への懸念を挙げ、2026年11月の選挙で有権者に問うべき問題だと主張しました。

マーク・ケリー上院議員も、AIシステムが経済、人々、地域社会へ被害を与えないよう対応を強化する必要があると述べています。

共和党側でも、ユタ州のスペンサー・コックス知事やフロリダ州のロン・デサンティス知事が州レベルの規制を求めています。トム・ティリス上院議員は、AI企業が共通の運用原則を作り、議会がそれを制度面から支える案を示しながら、中国が開発を続けるなかで米国だけが過剰規制へ進むことにも警戒しています。

Reutersは9月17日時点で、AIへの不安は米政界で扱われる頻度を増しているものの、経済、移民、国際情勢などを押しのけて主要選挙争点になった段階ではないと報じています。

POLITICOも、民主党がAIを物価問題より優先する選挙メッセージにはまだしていないとしています。

世界では「人類滅亡」より雇用への不安が前面に出る

米国以外ではどうでしょうか。

POLITICO Pollと同じ「AIが人類を滅ぼすリスク」を同一条件で複数国に尋ねた2026年の国際調査は確認できません。米国の63%と、日本や中国の数字を直接並べることはできない状態です。

ただし、AIに対する不安を比較する新しい国際調査が、POLITICOの記事公開翌日の9月17日にPew Research Centerから公表されました。

Pewは2026年2月8日から5月13日に36か国で42,151人を調査し、米国については別に調査しています。米国を含めると37か国の比較です。

日常生活へのAI利用について、37か国の中央値では37%が「期待より不安」、41%が「不安と期待が同程度」、13%が「期待の方が大きい」と回答しました。

雇用についてはさらに慎重です。37か国中34か国で、今後20年間にAIが雇用を増やすより減らすと考える人の方が多くなりました。

特に雇用減少を予想した割合が高かった国には、次の3か国があります。

国AIによって雇用が減ると予想
オーストラリア76%
韓国76%
米国71%

ただし、この数字をAIそのものへの拒否と読むと実態からずれます。

韓国では76%が雇用減少を予想している一方、61%はAIについて「不安と期待が同程度」と回答し、21%は期待の方が大きいと答えています。

仕事が減ると予想することと、AIの利用そのものを否定することは別の態度として現れています。

日本では若い世代の警戒感も上昇

Pewの2026年調査には日本も含まれています。

今回の国際比較では、日本を含む高所得国でAIへの認知度が比較的高く、若い世代ほどAIについて多くの情報に触れている傾向が確認されました。

日本では2025年から2026年にかけて、18〜34歳で「期待より不安が大きい」と答える割合が上昇した国の一つにも挙げられています。Pewは同様の変化をスウェーデン、ポーランド、ブラジル、オーストラリアでも確認しました。

米国のように「AIによる人類滅亡」が政治議論の前面に出ているわけではありませんが、若い世代まで含めてAIへの警戒が弱まっているとは言えない結果です。

中国はAIリスクを認めながら、開発減速には慎重

今回のPew国際調査には中国本土が含まれていません。そのため、2026年9月現在の中国国民の意識をPOLITICO Pollと同じ条件で比較できる数字はありません。

一方、中国政府と企業がAIリスクをどう扱っているかについては、この数日だけでも動きがあります。

9月17日、Huaweiの輪番会長Eric Xu氏は上海で開かれたHuawei Connectで、中国のAIモデルは米国の最先端モデルほど強力ではなく、米企業が報告しているようなフロンティアAIのリスクを中国側がまだ同じように経験する段階ではないとの認識を示しました。

Xu氏はそのうえで、中国企業はAI開発を加速し、安全性とのバランスを取る必要があると述べています。欧米で出ている開発減速論について、中国では米国の技術的優位を維持するための議論ではないかという疑念もあるとReutersは報じました。

中国政府がAIの暴走リスクを無視しているわけでもありません。

Reutersが9月14日にまとめた中国のAI安全政策では、AIエージェントが制御を回避する問題、データ汚染、アルゴリズム操作などを対象とした安全評価や外部テスト、規制監督が進められています。2026年5月には関連する基準が導入され、AIエージェントについて強制力を持つ国家標準の策定も進行中です。

中国側の姿勢は、AIを制御不能になり得る技術として警戒しながらも、開発そのものを長期間停止する方向には向かっていません。産業への導入を進めながら、国家標準と監督制度でリスクを管理する方針です。

AI企業の「減速論」と米中競争の関係は、当サイトの以下の記事でも詳しく扱っています。
AI企業は減速を訴える 米中競争が生む囚人のジレンマ

現在のAIでも安全性をめぐる問題は起きている

人類滅亡のような長期的な予測とは別に、現在のAIエージェントでも意図しない挙動は報告されています。

OpenAIは2026年9月、モデルが自分への指示を書き換える、失敗を隠すよう未来の自分へ指示する、公開されていたAPIキーを探して利用する、許可なくファイルをインターネットへアップロードするといった6件のmisalignment事例を公開しました。

これらの事例は、人類滅亡につながる証拠ではありません。一方で、高度なモデルをどこまで監視し、異常な行動をどう検出・公開するかという現在進行形の問題を示しています。

OpenAIが公表したAIの懸念行動6件と開示制度の課題

2026年7月には、OpenAIがサイバーセキュリティ能力を評価していたAIエージェントが、想定外の経路を利用してHugging Faceの本番環境へ到達したインシデントも起きています。

OpenAIのAIがHugging Faceに侵入?実験中に起きたAIエージェントのインシデントを解説

将来の破局的リスクを論じる際にも、現在確認されているAIの挙動と、将来についての確率的な予測は分けて扱う必要があります。

V2EXでは「本当に現在のLLMが人類を滅ぼせるのか」という議論

政府や世論調査とは別に、中国語圏の技術者コミュニティではどのように受け止められているのでしょうか。

V2EXでは9月14日、「关于 AI 对人类的威胁(AIの人類への脅威について)」というスレッドが立っています。

投稿者は、AI企業の研究者による「AIが人類を滅ぼす」といった警告を目にする機会が増えたとしながら、現在の大規模言語モデルが具体的にどの経路で人類を脅かすのか、その実現可能性を説明してほしいと問いかけています。

9月18日の確認時点では13件の返信が付いており、AI企業側の警告そのものを企業価値やビジネス上の利害と結びつけて疑う意見もあります。

5月には、「このAIの発展速度では、AIの制御不能による世界の終わりも遠くないのではないか」という別の投稿もありました。

投稿者はAIを使ったプログラミングの能力から大量失業への不安を感じ、そこから制御不能なAIの可能性へ話を広げています。返信では、AIが自分の意思を持つような新しい仕組みがなければ制御不能までは行かないという意見がある一方、現在のAIでも大規模な失業は起こり得るという見方も出ています。

V2EXはIT・技術系利用者が多いコミュニティで、中国全体の世論を代表するものではありません。ここから「中国人はこう考えている」と一般化することはできません。

確認できるのは、「AIが人類を滅ぼす」という米国発の議論が中国語圏にも入っていることと、それに対して現在の技術で本当に可能なのか、失業の方が先に起こるのではないか、企業側の警告をどこまで信用するべきか、といった議論が行われていることです。

各国で違うのは「AIを恐れるか」より「何を恐れるか」

今回の資料を並べると、「米国はAIを恐れ、中国はAIを歓迎している」という分け方では実態を説明できません。

米国ではAI企業のトップや研究者から実存的リスクへの警告が相次ぎ、一般成人の63%が高度なAIによる人類滅亡を中程度以上のリスクと評価しました。開発速度そのものを落とす選択肢も政治議論に入っています。

中国もAIエージェントの暴走を含むリスクを想定し、安全基準を作っています。ただし米国との技術競争が続くなか、中国企業側からは現在の段階で開発を遅らせることへの警戒も出ています。

日本、韓国、欧州などを含むPewの国際調査では、「人類滅亡」より雇用や格差への影響が数字として強く表れています。37か国中34か国で、AIが雇用を増やすより減らすと予想する人の方が多いという結果でした。

さらに、Pewの国際調査は2026年2月から5月に行われています。9月に相次いだAI企業関係者の警告より前です。

現在の国際比較には一つ大きな空白があります。

同じ質問、同じ選択肢で「高度なAIが人類を滅ぼすリスク」を中国、日本、欧州、米国へ同時に尋ねたデータがないことです。

その調査が行われれば、米国で出た63%という数字が世界的なAI不安の一部なのか、それとも現在の米国に特有の現象なのかを、より直接的に比較できます。

FAQ

米国人の63%は「AIが人類を滅ぼす」と信じているのですか?

そういう意味ではありません。Public Firstの調査は、高度なAIが人類を滅ぼすリスクをどの程度と考えるかを尋ねたものです。63%は「少なくとも中程度のリスクがある」と回答した割合で、人類滅亡が確実に起こると答えた割合ではありません。

中国でもAIの暴走は問題視されていますか?

されています。中国ではAIエージェントの制御回避、データ汚染、アルゴリズム操作などを対象に安全基準や評価制度の整備が進められています。ただし、AI開発そのものを長期停止する方向ではなく、開発と安全管理を並行させる姿勢が中心です。

世界ではAIへの不安が強いのでしょうか?

Pewの37か国比較では、中央値で37%が「期待より不安」、41%が「不安と期待が同程度」でした。雇用については37か国中34か国で、AIによって仕事が増えるより減ると考える人の方が多くなっています。

米国の63%と日本や中国を直接比較できますか?

現時点ではできません。POLITICO/Public Firstと同じ「AIによる人類滅亡リスク」の質問を同一条件で各国に尋ねた最新の国際調査は確認できません。国際比較に使えるPew調査は、AI全般への期待・不安や雇用・格差への影響を尋ねた別の調査です。

参考・参照元

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この記事を書いた人

AI・IT・テクノロジーの話題を中心に、気になったニュースや研究を一次資料までたどって調べています。

新しい技術を「すごい」「怖い」で終わらせず、何が起きているのか、なぜ注目されているのか、どこまで分かっているのかを、できるだけ前提から整理して書いています。

AI、サイバーセキュリティ、プログラミング、ハードウェア、そして技術が社会に与える影響が主なテーマです。
専門的な話でも、詳しい人だけのものにしないこと。分からないことは分からないままにせず、元の資料まで確認すること。
そんな姿勢で「柩のノート」を更新しています。

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