MENU

SR-71復活は本当か 元SR-71技術者への打診とNASA高速飛行研究の再編

目次

NASAが元SR-71技術者に再飛行の仕事を打診していた

2026年9月29日、米航空専門誌Aviation Weekは、NASAが退役したSR-71A「844号機」を再び飛ばすため、かつてSR-71に携わった技術者たちに仕事を打診していたと報じました。打診を受けたのは、空軍とNASAでSR-71Aの試験エンジニアを務めた70代後半のMike Relja氏と、同じく元NASAの試験エンジニアであるTim Conners氏らです。

声をかけたのは、6月にNASAの特別プロジェクト担当ディレクターに就いたDavid Ash氏で、元米海軍とJobyのテストパイロットです。Relja氏によると打診は8月で、その時点で844号機には格納庫の中で作業員が入っていました。

Relja氏は「自分は年を取りすぎている」と伝え、現在の状態から飛行できるところまで戻せるとは思えない、とも話したといいます。

ここまでの動きを時系列で並べると、次のようになります。

時期出来事確認元
2026年前半(遅くとも5月17日まで)844号機がアームストロング飛行研究センターの展示台から外される。4月より前だった可能性もあるAviation Week(商用衛星画像)
その後旧スペースシャトル格納庫へ移され、機体の検査が行われるRelja氏の証言(Aviation Week)
6月David Ash氏がNASAの特別プロジェクト担当ディレクターに就任Aviation Week
夏(7月のEAA AirVenture)Isaacman長官がX-planeの再構築や有人極超音速機への関心を語る。「SR-71を復活させられるのか」と聞かれ「それは機密だ」と返す。冗談とも取れる受け答え航空ニュースサイトの報道(一次資料未確認)
8月Relja氏らに再飛行プロジェクトへの参加を打診。844号機ではすでに作業が始まっていたAviation Week
9月12〜14日All-In SummitでIsaacman長官が、SR-71を思わせる機影の入った「X-planeポートフォリオの再構築」のスライドを示すAviation Week、TWZ
9月下旬Aviation WeekとTWZが844号機の撤去を報道Aviation Week、TWZ
9月29日Aviation Weekが元技術者への打診を報道Aviation Week

どこまで確認できているか

NASAは再飛行プロジェクトの存在を公式には認めていません。

Aviation Weekの取材に対し、広報担当者はSR-71への関心とNASAでの歴史は認識しているとしたうえで、現時点で機体について共有できる追加情報はないと答えています。All-In Summitでの長官の発言や、展示台から外した理由についても説明していません。

証言しているのは、打診を受けた元技術者たちです。プロジェクトを運営している立場ではありません。Aviation Weekによると、Ash氏は採用候補との面談で、なぜ費用と手間をかけてSR-71Aを再び飛ばすのかという質問には答えなかったといいます。

航空メディアのmigflugは、二つの読み方を並べていました。

一つは、27年前に退役した展示機の腐食を点検しているだけで、長官のスライドと時期が重なったのは偶然だというもの。もう一つは、長官が意図してSR-71を思わせる機影を選んだという読み方です。

migflugの記事が出た時点で確認されていたのは、機体が点検のため格納庫へ入ったことまででした。この記事は、元技術者への打診が報じられる前に公開されています。

All-In Summitのスライドについては、司会者からBlackbirdについて指摘されたIsaacman長官が、本当にBlackbirdだと思うか、と聞き返しています。機影が開発中の機体を描いたものなのか、将来構想を示すイメージなのかは分かっていません。

確認できるのは、844号機が展示台から外されて格納庫に入ったこと、8月時点で作業員が入っていたこと、NASAが元技術者に再飛行のための仕事を打診したことです。

Aviation Weekはこれを再飛行プロジェクトとして報じていますが、NASAは公式には認めておらず、その目的も明らかにしていません。

844号機とはどんな機体か

844号機は、空軍のシリアル番号61-7980を持つSR-71Aです。最後に製造されたSR-71Aとされ、NASAでは1990年代、高速・高高度の航空研究に使われていました。

NASAは当時、時期を分けてSR-71Aを2機、操縦訓練型のSR-71Bを1機運用しています。

844号機の経歴でよく知られているのが、LASRE(Linear Aerospike SR-71 Experiment)です。

再使用型宇宙往還機向けに研究されていたリニア・エアロスパイクエンジンの実験装置を機体の背中に載せ、飛行中の空力データを取得しました。最初の飛行は1997年10月31日で、Mach 1.2まで加速しています。実験用エンジンを飛行中に点火することはありませんでした。

844号機には、SR-71そのものの研究だけでなく、別の技術を高速域へ運ぶ試験母機として使われた前例があります。

1999年10月9日には、エドワーズ空軍基地の航空ショーで飛行しました。これがBlackbird系列最後の飛行となり、NASAの記録ではMach 3.21、高度8万100フィートに到達しています。

最終飛行後、844号機はアームストロング飛行研究センター(当時のドライデン飛行研究センター)で展示されていました。Aviation Weekは、現在の機体が製造から59年を経ているとしています。

なぜ今なのか:NASAの高速飛行研究の再編

NASAは844号機を飛ばす理由を説明していません。

同じ時期、NASAは航空研究の重点を組み替え、高速飛行を4つの重点分野の一つに位置づけています。

この方向性は遅くとも2025年には表に出ていました。NASAの航空研究ミッション本部は2025年9月の説明資料で、「Pioneer High-Speed Flight(高速飛行の開拓)」を4つの重点分野の一つに掲げています。

2026会計年度の組織図にはHigh-Speed Flight(HSF)プロジェクトが置かれています。

HSFは、Mach 1からMach 5以上までの空気吸い込み式高速飛行を研究対象とするプロジェクトです。X-59の試験を支援するほか、再使用型極超音速機、宇宙へのアクセス、地球上の2地点間を高速で移動するpoint-to-point輸送も将来用途として挙げています。

航空研究予算では、大幅な削減要求も繰り返されています。

2025会計年度の成立額は9億3500万ドルでした。2026会計年度の大統領予算要求は5億8870万ドルで、担当者は約4割の削減になると説明していましたが、最終的な成立額は前年と同じ9億3500万ドルです。

2027会計年度の予算要求では、再び6億950万ドルへの削減が示されています。

2026年には、X-planeをめぐる動きも具体化しました。

  • X-59の費用と遅れへの問題提起。 Isaacman長官は4月の上院歳出小委員会の証言で、X-59は4億6800万ドルの計画で2022年1月の初飛行を予定していた一方、費用は8億ドル近くに増え、初飛行は2025年末になったと述べています。
  • Aeronautics Flight Accelerator。 NASAは、3年以内の飛行につながる研究開発や飛行試験について、産業界、大学、政府機関から情報を募集しました。対象は亜音速、超音速、極超音速の技術です。
  • X-planeへの再投資。 Aviation Weekなどは、Isaacman長官がより多くのX-planeや、従来より大胆な機体・推進設計への投資を求めていると報じています。
  • 2027会計年度の予算要求。 NASAは航空研究全体を減額する一方、Advanced Air Vehicles Programに1億9110万ドルを要求しています。このプログラムにはHigh Speed Flightが含まれ、X-59のデータ解析や極超音速飛行に関わる研究が計画されています。別のIntegrated Aviation Systems ProgramではX-59計画を加速し、その後のX-planeプロジェクトへ資金を使えるようにする方針も示されています。

All-In SummitでIsaacman長官は、NASAの最初の「A」であるAeronauticsのため、X-planeの機体群を立て直していると説明しました。

そのうえで、NASAが過去数十年と同じように高く速く飛び、さらにその先を目指す日は遠くない、という趣旨の発言をしています。

速度域を見ると、現在の公開計画には一つの間があります。

X-59は2026年6月5日に初めて音速を超え、約Mach 1.1、高度4万3400フィートに到達しました。6月12日にはMach 1.4、高度5万5000フィートにも初めて到達しています。

一方、HSFプロジェクトはMach 5以上までを研究範囲に含めています。

NASAが公開している研究計画を見る限り、X-59とMach 5以上を視野に入れた極超音速研究のあいだで、Mach 3級を継続して飛べる研究機は示されていません。

ここからは筆者の推定です。

LASREの前例を考えると、844号機を再び飛ばす場合、SR-71そのものを研究するだけでなく、新しい推進技術、センサー、材料などをMach 3級の環境で試す母機として利用する方法が考えられます。

これはNASAが公表した用途ではありません。

NASAは遅くとも2025年には高速飛行を重点分野の一つに掲げ、FY2026には4つの重点分野を軸に航空研究を再編しました。2026年には将来のX-planeへ資金を振り向ける方針も予算書に明記しています。

その時期に、844号機の再飛行を示唆する動きが重なっています。

ただし、両者が直接結びつくとNASAは説明していません。

航空研究予算の大幅な削減が要求されるなかで844号機の再飛行へ費用を使うのであれば、相応の研究上の目的が必要になります。その目的は現在も公表されていません。

再び飛ばすうえでの壁

Relja氏がAviation Weekに挙げた課題は、機体だけでなく、SR-71を運用するための仕組み全体に及びます。

  • 機体。 長年屋外に展示されていたため、内部の空洞に水や砂が入り込んでいる可能性が高いとRelja氏はみています。
  • エンジン。 機体に積まれた2基のJ58と機体の下に置かれていた予備エンジンは、最終飛行以来、潤滑や回転が行われていない可能性があります。Relja氏によると、現役時代は予備エンジンでも90日ごとに回転させ、180日ごとに運転していました。
  • 部品。 Aviation Weekによると、空軍とNASAは2007年、Blackbird用の予備部品約6億ドル分を廃棄しています。
  • 燃料と油脂類。 Blackbirdで使われた特殊燃料JP-7、エンジン点火用のトリエチルボラン(TEB)、エンジンオイルや油圧作動油などを改めて確保する必要があります。
  • 地上支援機材。 主翼を持ち上げる台車、エンジンを降ろす台車、インレットスパイクや射出座席を外すための機材なども必要です。

Relja氏によると、こうした課題を挙げるたびにAsh氏は「エンジニアリングで対処する」という趣旨の回答をし、具体的な方法は語らなかったといいます。

一方、Relja氏は十分な資金があれば不可能ではないとも話しています。

打診を断ったConners氏は別の可能性を挙げています。

同氏によると、全米と英国の博物館に展示されているBlackbirdのうち9機は自力で展示先まで飛行しており、エンジンも機体とともに残されています。こうした機体から必要な部品を確保できる可能性があるという見方です。

操縦士についても、Conners氏は、NASAのテストパイロットが1990年代初めに空軍から機体を受け取った際には大がかりな訓練を必要としなかったと説明しています。Lockheedの運用マニュアルも残っています。

ただし、これらはConners氏の証言に基づく見通しであり、NASAが博物館機から部品を転用すると決めたわけではありません。

まだ分かっていないこと

今回確認した報道とNASAの資料からは、次の点は分かっていません。

  • 計画の位置づけ。 NASA内部でどのように承認され、予算がどこから出ているのか。
  • 目的。 試験母機として使うのか、データ取得のためなのか、それ以外なのか。
  • 時期。 再飛行を実現する場合の目標時期。
  • ほかの機関の関与。 空軍など、NASA以外の機関が関わっているのか。
  • スライドの機影。 All-In Summitの機影が844号機や実際に開発中の機体と関係しているのか。

よくある疑問

SR-71はまた飛ぶのですか?

現時点では分かりません。

Aviation Weekは844号機の再飛行プロジェクトとして報じていますが、NASAは計画を公式には認めていません。

確認されているのは、844号機が格納庫へ移されて作業が行われていたことと、NASAが元SR-71技術者に再飛行のための仕事を打診したことです。

なぜNASAがSR-71を持っているのですか?

NASAは1990年代初めに空軍からSR-71を受け取り、高速・高高度の航空研究に使用していました。

844号機はそのうちの1機で、1999年10月9日にBlackbird系列として最後の飛行を行いました。

偵察機として復活するのですか?

今回確認した報道やNASA資料に、844号機を偵察任務へ戻すという記述はありません。

NASAが1990年代にSR-71を運用した目的は航空研究でした。

All-In Summitのスライドに映っていたのはSR-71ですか?

分かっていません。

SR-71を思わせる形状でしたが、Isaacman長官は機体の正体を説明せず、本当にBlackbirdだと思うか、と聞き返しただけです。

スライドが実際の開発機を示している証拠も確認されていません。

参考・参照元

Raspberrypi5 8G ラズベリーパイ5 技適取得済マーク入り商品

Raspberrypi5 8G ラズベリーパイ5 技適取得済マーク入り商品

Amazonで見る
ハッカーの学校 IoTハッキングの教科書

ハッカーの学校 IoTハッキングの教科書

Amazonで見る
今すぐ使えるかんたんEx Claude 仕事術&時短技 生成AI活用BESTセレクション [Claude Code & Claude Cowork対応]

今すぐ使えるかんたんEx Claude 仕事術&時短技 生成AI活用BESTセレクション [Claude Code & Claude Cowork対応]

Amazonで見る
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

AI・IT・テクノロジーの話題を中心に、気になったニュースや研究を一次資料までたどって調べています。

新しい技術を「すごい」「怖い」で終わらせず、何が起きているのか、なぜ注目されているのか、どこまで分かっているのかを、できるだけ前提から整理して書いています。

AI、サイバーセキュリティ、プログラミング、ハードウェア、そして技術が社会に与える影響が主なテーマです。
専門的な話でも、詳しい人だけのものにしないこと。分からないことは分からないままにせず、元の資料まで確認すること。
そんな姿勢で「柩のノート」を更新しています。

目次